腎臓は体内の老廃物を尿として排泄するほか、体内の水分バランスを整えたりホルモンを産生したりする働きがあります。
猫の腎臓病は飼い主が気づいたときにはかなり進行している場合が多く、目に見えて現れる症状はたくさん水を飲むようになり、尿の量が増えることです。そのため尿の色が薄くなり、においもあまりしなくなります。
元気も食欲もあるので気づかないことが多いのですが、この時点で腎臓の機能は半分以上が失われているとみていいでしょう。その後は食欲減退や体重低下、毛艶が悪くなるなどの症状が徐々に現れます。症状が進行すると排泄されすべき毒素や老廃物が体内に蓄積して尿毒症を起こし、食欲がまったくなくなって激しい嘔吐を繰り返し、体温も低下します。
最後は腎臓がまったく機能しなくなります。腎臓病は高齢の猫の病気として高位にあるので、気を付ける必要があります。
猫の腎臓病の原因ははっきりわかっていません。 人間の場合は塩分の摂り過ぎや糖尿病などが腎臓病の原因になりますが、猫の場合はそうとは限りません。どんなに飼い主が気をつけて良質な総合栄養食を適量食べさせていても、腎臓病になってしまう猫は多くいます。
一説によると、猫はもともと砂漠の動物で水分を無駄にしないよう尿を濃縮して排泄するため、腎臓に負担がかかりやすいといわれています。(※1)しかし、実際のところは不明です。ある種のウイルスの影響や、あまり水を飲まないので歯肉口内炎などが影響しているという考え方もあります。また、生まれつき腎臓の発育が悪く正常に成長しない腎臓異形成や多発性嚢胞腎など、遺伝性の病気も腎臓病の原因になります。
いずれにしても、腎臓病は高齢の猫の大半がかかっていると考えられ、基本的にはすべての猫種で注意が必要です。(※2)
急性腎臓病の場合、多くは入院治療を行ないます。水分や電解質などを点滴で投与する積極的な輸液療法が選択されます。
一方、慢性腎臓病は完治させることができないので、治療は症状の進行を遅らせることが目的となります。症状の程度によって異なりますが、これ以上腎臓に負担をかけないように内服薬が処方され、同時にタンパク質や塩分が制限された食事を与えていくことになります。脱水がみられれば皮下輸液も行ないます。処方された薬や食事は基本的に生涯続けなければなりません。
慢性腎臓病を治療に対する冬虫夏草の効果を裏付ける論文があります。
慢性腎臓病の治療に対する冬虫夏草(Cordyceps sinensis)(中薬:中医学の薬草療法)
慢性腎臓病(CKD)患者は腎機能が徐々に低下する。Cordyceps (Cordyceps sinensis)は冬虫夏草とも呼ばれ、中医学でCKDの治療に広く用いられている。本レビューは、CordycepsがCKD患者に安全かつ有効であるかどうかを検証するために実施した。 2014年4月までに出版された文献を検索し、中国で1746名のCKD患者に治療の一部としてCordycepsを投与した22件の試験のエビデンスを評価した。 従来の西洋医学による治療にCordyceps製剤を追加した場合、腎機能の改善や合併症対策に有用である可能性を示唆するエビデンスが得られた。しかし、エビデンスの質は低く、CKD患者に対するCordycepsについて、最終的な結論を導くことはできなかった。
従来法の補助療法としてのCordyceps製剤は血清クレアチニンを低下させ、クレアチニンクリアランスを改善し、蛋白尿を軽減させ、ヘモグロビンや血清アルブミンの上昇など、CKDに関連した合併症を軽減させる可能性が示された。しかし、エビデンスの質が低いため、最終的な結論を下すことはできなかった。
出典:「慢性腎臓病の治療に対する冬虫夏草(Cordyceps sinensis)(中薬:中医学の薬草療法)」Cochrane
https://www.cochrane.org/ja/CD008353/RENAL_man-xing-shen-zang-bing-nozhi-liao-nidui-surudong-chong-xia-cao-cordyceps-sinensiszhong-yao-zhong-yi
※この論文はヒトを対象に試験を行ったものです。犬・猫にも同様の効果があるとは限りません。
これによると、冬虫夏草に含まれるコルジセピンは血清クレアチニンを低下させるそうです。血清クレアチニンの低下により、クレアチニンクリアランスを改善し、蛋白尿を軽減させます。
ほかにも、 血清アルブミンやヘモグロビンを上昇させるなど、慢性腎臓病に伴う合併症を軽減させる可能性が示唆されています。
愛猫が少しでも元気で過ごせるよう、コルジセピンを取り入れた食事習慣を検討する方もいらっしゃいます。ただ一言に冬虫夏草といっても、すべての冬虫夏草にコルジセピンが含まれているわけでなく、サナギタケ冬虫夏草独自のものなので、検討する際はご注意ください。
(※1)参照元:だて動物病院:https://date-vet.jp/byoki/vol4.html
(※2)参照元:厚木キジュ動物病院:https://kiju-ah.com/urinarysystem/
冬虫夏草に興味が湧いてきた方のなかには、実際に摂取してみたいと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
冬虫夏草の摂取は、漢方のように煎じて摂取する・サプリメントとして摂取するなど、さまざまな方法で試しやすくなってきました。
ただ、国内に流通している冬虫夏草にはさまざまな種類があり、海外で製造されているものもあります。海外製造品の中には、まれに偽物や粗悪品が横行していることも…。
冬虫夏草を選ぶときは、厳しい管理体制で栽培された冬虫夏草を使っているか、もしものときに製造元に問い合わせしやすい国内製造のものから調べることをおすすめします。