ここでは冬虫夏草を選ぶポイントとして、製造元の確認を行うことの重要性について説明しています。
冬虫夏草は中国の青海省やチベットの海抜3,000m以上の高山に生息するコウモリガの幼虫に、コルジセプス・シネンシス(冬虫夏草菌)が寄生して成育したものです。極めて限定された条件の元でしか生産されないことと高額で取引されることから乱獲が進み、現在では中国国内でも一般の人が手にすることができないほど高額かつ希少な存在になってしまいました。
中国では冬虫夏草を保護する目的から厳しい輸出制限を行い、現在は日本に冬虫夏草の輸出は行われていません。中国から正規ルートで冬虫夏草が入ってくることは、あり得ないのです。また仮に何らかの方法で日本に冬虫夏草が入ってきたとしても、それが本物の冬虫夏草なら1グラムで7,400円(2010年調べ)と金やプラチナより高額で販売されているはずです。
冬虫夏草(コルジセプス・シネンシス)は虫草菌類(コルジセプス属)の1つです。コルジセプス属は世界中に分布していて、その種類も350種類を上回ると言われています。そのうち中国で漢方薬として薬効が認められているものは冬虫夏草をはじめサナギタケ(Cordyceps militaris)やセミタケ(Cordyceps sobolifera)、ハナヤスリタケ(Cordyceps ophioglossoides)など数種類に過ぎません。
しかしコルジセプス属の大部分は昆虫寄生性があるため、冬虫夏草に類似した虫草菌は数多く存在することになります。薬効が認められていない虫草菌についての研究はほとんど進んでいないのが実情ですから、中には人体に有害な物質を含む冬虫夏草もどきが販売されている可能性も全く否定するというわけにはいかないでしょう。
冬虫夏草は価格に注目すれば、ほとんど間違いなく見分けることができます。もともとが高額なものですから値引き販売などあり得ませんし、そもそも本物なら品薄で簡単には入手さえできないのです。悪質な製品の中には小麦粉やトウモロコシの粉、プラスチックなどを成型して冬虫夏草に見せかけたものもあるそうです。
冬虫夏草は1グラム7,000円を超える高価な商品なので、中国の漢方薬業界では目方を不正に増やすことでぼろ儲けをたくらむ業者もいます。鉛やカドミウムなど比重が高い重金属を粉末にして冬虫夏草にまぶしたり、内部に仕込むことで重量を実際より多く見せようとするのですが、人体に重大な害を及ぼす重金属を平気で使うことからして既に漢方薬業者としてのモラルに欠けていると言えるでしょう。
冬虫夏草を摂取している人が体調を崩し、病院で検査したら鉛中毒だったという例も何件か報告されています。製造元の確認が取りにくい中国からの輸入品は、避けた方が賢明なようです。
冬虫夏草と称して販売されるものの中には、まったくと言って良いほど冬虫夏草の成分を含んでいないものがあります。またサプリメントとして売られている冬虫夏草の場合も、輸入品には何が入っているのか確認できないものもあります。
商品名が冬虫夏草でも冬虫夏草のもつ特徴的な成分が含まれていないなら、それはただの怪しげな輸入食品と言うに過ぎません。また検疫を意識してか、輸出前に加熱した冬虫夏草も見付かっています。冬虫夏草の成分は加熱によって効果が失われてしまうものも多いので、それが本物の冬虫夏草だとしても期待する効果は得られないことになります。
冬虫夏草(コルジセプス・シネンシス)は中国でしか生産されていません。しかし冬虫夏草を上回る薬効が期待されている冬虫夏草(サナギタケ/コルジセプス・ミリタリス)は日本が初めて栽培することに成功しました。サナギタケ冬虫夏草も本家の冬虫夏草と同様に人工栽培が非常に困難な虫草菌ですが、国立京都工芸繊維大学名誉教授の松原博士が30年の歳月をかけて開発した無菌養蚕システムを応用することによって、人工栽培が可能になったのです。
無菌養蚕システムによって栽培される冬虫夏草(サナギタケ)は天然の冬虫夏草と同じように、蚕のサナギに虫草菌を寄生させて栽培を行います。日本国内で厳密に管理されて栽培されていて、数ある虫草菌類でもサナギタケにしか含まれていないコルジセピンは、悪性腫瘍を抑制する成分としても注目されています。サナギタケ冬虫夏草は1年中安定して生産できるため、安価に入手できることも利点と言えるでしょう。
冬虫夏草に興味が湧いてきた方のなかには、実際に摂取してみたいと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
冬虫夏草の摂取は、漢方のように煎じて摂取する・サプリメントとして摂取するなど、さまざまな方法で試しやすくなってきました。
ただ、国内に流通している冬虫夏草にはさまざまな種類があり、海外で製造されているものもあります。海外製造品の中には、まれに偽物や粗悪品が横行していることも…。
冬虫夏草を選ぶときは、厳しい管理体制で栽培された冬虫夏草を使っているか、もしものときに製造元に問い合わせしやすい国内製造のものから調べることをおすすめします。